2022_0225に記す
ここ数日で戦争反対というtweetが流れてくることが多くて嫌気がさしてきた.しばらくTwitterは見るべきではない
今回の場合戦争反対はいったい何に反対しているのだろうか.
誰に対してなぜ抗議しているのか明確にしてほしい.
なぜなら戦いは既に存在していたのだし,侵略に対しての抵抗は国際法の慣習上認められている.
あなたは誰に対して抗議しているのか?全てのウクライナの抗戦を含めた全ての戦争に反対しているのか?それともロシアの侵略に反対しているのか?
そしてあなたがそれに反対する理由は何なのかを明らかにしてほしい.
それだけで世界のごちゃごちゃした様子はスッキリして見通しが良くなる.
なぜなら私にとっては,全ての戦争に反対するような理想主義者の意見や,国際法や軍備の具体例を持ち出さない意見は全てみる価値がないnoiseだからだ.
2014年以降ウクライナとロシアの関係は少なくとも平和ではなく紛争による死者は継続的に出ていた.
ただこれが民間軍事会社(MPC)による活動であれば,国際的に大きなニュースとはならず,プーチンがロシアにMPCは存在しないと主張する以上大きな非難は起こらなかった.
情報戦も常に続いていたロシアはウクライナの親露派を支援し,メディアを買収し,フェイクニュースを流し続けた.
銃を使うだけが戦争ではなく,正規軍を使うだけが戦争ではない.
いくらTV war以降の時代と言えども,いや,だからこそ戦争は人目につかないようにおこなわれる.
今回はロシアが正規軍を大規模に動かしているが,正規軍が動く以上に,汚れ仕事は民間軍事会社が行うのだろう
また正規軍は電子戦を有利に進め,通信を無効化して指揮系統を混乱させるだろう.
2014年にはウクライナ軍は麻痺して盗聴のリスクのある個人の電話で連絡を取らざるを得なくなったことすらあった.
今日までに起きたことは全てが2014年の焼き直しに見える.
ロシアはソ連が解体して以降,地上軍でNATOに大きく劣るようになった.
それがロシアの政府と軍の一部の,被害妄想の要因の一つとなった.彼らは自分達が西側の文化やイデオロギーによって侵略されていると考えているのだ.
だからこそロシアは衛星国を持つことで緩衝地帯を作りたい.地政学的な分析ではジョージアやウクライナはこのような理由から侵攻された.
(不凍港である黒海への影響力を高めることで,大西洋へ進出する狙いもあるようだが)
だが通常戦力で劣る以上,いくら情報戦や電子戦を駆使したとしてもNATOに対する抑止とはならない.
だからこそロシアは核の使用を躊躇わないという態度をみせてくるのだ.
対してNATOには報復で核を使用しようという気概はみえてこない.この点でNATOは完全に足元をみられている.
ここでいう核とは,冷戦時代のような世界が滅ぶような大出力核ではない.敵の集結した部隊や航空基地,ミサイル基地を潰せる程度の小出力の核だ.
結局大規模核は,世界が滅ぶので誰も使おうとしないし使い道もないのだ.そして使えないとわかっているものに抑止力としての効果もない.
世界各国の軍は小規模核の使用について研究を進めている.どうやら定石としては,まず人口が少ない地域で脅しとして核を使用して,必要であれば.その後本格的な攻撃に使用するというものだ.
今回はプーチンが,核を使用する準備があると明言しているが,使用されるとすれば,上記の定石のようにエスカレーションが起こるだろう.
なので,例え核が数発使用されたとしても慌てることはない.世界が滅びるまでにはそこから随分なエスカレーションが必要となるからだ.
世界が滅びるより先に,紛争に決着がついてデスカレーションが起きてしまうだろう.
かつての衛星国といえば,フィンランドとポーランドが思い浮かぶ.この二つの国家はソ連から何を防衛しようとしたかが対照的だ.
そして今回のウクライナはフィンランドに近い状況になるのではないかという話がある.
フィンランドは首都移転まで行いつつ徹底的に抗戦して,できるだけ有利な停戦協定に持ち込み,主権を守ることに成功したが,戦火で多くの国民を失った.
対するポーランドは,国民の保護を優先して早めの降伏を選んだ.これによってポーランドには傀儡政府が樹立して,WW2終結もその状態が長く続き政治は不安定だった.
国家が侵略されたとき,何を第一に守るべきかは一概に決まるものではないが,とにかく主権と人命はトレードオフの関係であると,安全保障分野では考える.
ではウクライナがどうなっているかといえば,フィンランドに近い状況だろう.
ウクライナ政府は電子戦で軍が機能しなくなることも想定して,市民によるゲリラ戦も行う準備を続けてきた
きっと多くの市民が死ぬだろうが,それもわかって政府や市民は選んだように見える.
戦争では時間稼ぎは,有利な停戦交渉や,友軍の支援,非軍事的な国際的な支援を得るための大切な手段だ.
ウクライナは,時間稼ぎをしてチャンスが来るのを待っている.果たしてこの犠牲は報われるのだろうか.
中国が台湾に侵攻したとしたら,今のNATOの役割を日本は果たすことになる.
今のところX dayは2030年代だが,”明日は我が身”としてこの状況を見ていてほしい.
もちろん中国も電子戦や認知戦に力を入れていると同時に,核配備も進めている.
それに加えて超音速兵器という低高度で飛行するため,迎撃困難な新型ミサイルも配備されている.
この分野では西側は大きく中露に引き離された.
対する米軍も使用可能な小型核を原子力潜水艦に搭載する予定だ.
台湾侵攻では,日本も中国の防衛ラインの中に含まれるため,日本が戦場になる可能性も十分ある.
だからこそウクライナでの情報戦や小型核の抑止は他人事ではないのだ.
話はそれるがひとつ言っておきたい.
迎撃ミサイルというのはあればいいものではない.
迎撃ミサイルのある場所は優先度の高い攻撃目標になる
もっと問題なのが抑止論の観点から言って,相手が迎撃できるのであれば,ミサイルを使用することへのハードルは下がるのだ.
今回,NATOが核ミサイルを警戒しつつも.迎撃ミサイル配備に乗り気ではなかったのは以上の理由もある.
なので迎撃ミサイルがあれば何とかなるみたいな話は見たくもない.
最後にもうひとつ愚痴っておきたい.
日本は被爆国として核兵器に対する拒絶反応を起こしていてもどうしようもない.
核兵器を嫌っていても核兵器の使用は防げない.
まずは私たちが核の傘に入っていることを知って,その恩恵は何だったか理解してほしい.
これからの日本の安全保障が米の核兵器なしでは不可能に近い状況であることをしてほしい.
安全保障以外の場でも,核で地域をどう守るかを冷静に議論できる国になってほしい.
以上