苦しいときにはこれを聴け! part2
私のメンタルヘルスに役立つ音楽特集
寝込むほど体調が悪いとき,大抵の音楽は聴けなくなる.
しかし(以下略)
特集2回目です.
Orquestra Afrosinfônica "Orín, a Língua dos Anjos"
ブラジルのバイーア州のブラスオーケストラの作品.曲にはブラジル北東部などのリズムが取り入られているのでブラジル北東部の雰囲気が味わえる.
サンバのリズムとはまた異なる北東部のブラジルのリズムを使う作曲家や楽団が精力的に活動していることが嬉しい.
力強いが落ち着いたサウンドで気分が落ち着く.
愉快な曲を聴きたくても電化音楽を聴くと気持ち悪くなるときにおすすめ.
live映像もいい
Derek Bailey "Words"
即興音楽家デレク・ベイリーが一問一答をやっているときの録音.ひたすら紙に書かれた質問に答えつづける.
何かのワークショップだろうか?
ベイリーの音色は好きだが,うるさいので喋ってもらうだけの方が心地いい.
何の楽器の演奏も聴きたくないときにはこれを聴く.
意外といい声だよねぇ.発声の練習をしたくなる.
John Cage, David Tudur "Indeterminacy"
ケージが様々な小噺をする.大半はケージが有名人と会ったときのエピソードなので資料価値があるが,話の内容の掴みどころのなさが面白い.
かつてのNYのアートシーンが好きなひとには面白い話が多いだろう.話の中で様々な人間たちが出てくる.
ケージは一定のリズムで淡々と喋る.たまにチュードアがテープを弄って作った音や,ケージによるピアノの演奏もはいる.
稀にだがそれらの騒音が話のオチの役割を果たしているように聞こえることがある.狙っていたのかもしれない.
音楽にうんざりしているときに聴く.ぼんやり人のいない公園を散歩しながら,鳥の声と一緒に聞くと気持ちいい.
私のお気に入りはモートン・フリードマンの逸話だ.
杉本拓 "Opposite"
音楽も人間にもうんざりしているときに聴く.
杉本の作品はコンセプチュアルな思索によって生まれるものなので,できた演奏自体は思索の絞りカスのようなもののだが,聴いていて不快ではない.
むしろ音楽作品でありながらほとんど音もないため,CDを流していても再生していることを忘れてしまうほどだ.
そのような作品がどのようにして生まれたのかの疑問は杉本の著作などで解説を読んでもらうのがいいだろう.ユーモアのある文筆家なので,作品を聴いていなくとも解説を楽しめる.
今回の作品の場合は,杉本にしては音数がかなり多いが,特にリズムもメロディも存在しない.
思いつきでギターの音を鳴らしているだけなのかもしれないが,それでも聴いていて楽しい.
私はこの作品を聴くとき,楽音と楽音の間の無音に意識を傾ける.無音に注意を向けると,外の車の音や鳥の声が聞こえてくる.
普段そのような街の音を聴く人は,あまり多くないかもしれないが,実際に聴いてみると街は悪くない音で溢れている.
こうして聴いていると,杉本は楽音と街の音の音楽的な価値には大差がないということを伝えたいのだろうということがわかる.
杉本の作品の背後にある思想は,伝統的な音楽聴取に対する反抗心や敵対的な態度を伴うものだ.
杉本は芸術の権威を全て破壊しようとする極めて政治的な思想を持って戦っている.
非常に野心的な試みであるが,その思想がどのような結果を招くことになるのかは私にはわからない.
私の経験則だが,ラディカルな思想は魅力と共に毒を持っている.
特に音楽は,毒を薬に偽装することは朝飯前だ.
この音楽と音楽運動のどこに詭弁が隠れているかまだわからないが,毒には注意してほしい.
これは自分への忠告.
杉本は別枠でも紹介するかも
即興演奏の映像
以上